空き家を放置すると起きる3つのリスク
特定空家認定で固定資産税6倍、倒壊・火災の損害賠償、数次相続で売却不能。空き家対策特別措置法の改正点と、売る・貸す・解体の選択肢を整理します。
全国の空き家は900万戸を超え、過去最多を更新し続けています(出典:総務省「2023年住宅・土地統計調査」)。実家を相続したものの誰も住まず、固定資産税だけ払い続けている──そんな状態が増えているのは、所有者にとっても自治体にとっても深刻な問題です。
放置のコストは年間数万円の固定資産税だけにとどまりません。法律改正と社会情勢の変化で、空き家の維持コストは静かに上がり続けています。
リスク1:特定空家認定で固定資産税が6倍
空き家対策特別措置法(2015年施行)では、自治体が「特定空家」または「管理不全空家」と判断した物件は、住宅用地の特例(固定資産税の1/6軽減)から外されます。つまり、これまでの6倍の固定資産税がかかることになります。
2023年の法改正で「管理不全空家」のカテゴリが新設され、認定基準が緩和されました。倒壊レベルでなくても、外壁の剥離・庭木の越境・敷地内のゴミ放置などで認定される可能性があります。
具体的にどれくらい上がるのか
固定資産評価額1,500万円の土地(住宅地)の場合、住宅用地特例ありで年間固定資産税は約3.5万円。特例から外されると年間約21万円になります。差額17.5万円が毎年積み上がる計算です。
リスク2:倒壊・火災で損害賠償リスク
放置された空き家は、台風や地震で倒壊して隣家に被害を与えたり、不審者の放火で火災になったりするリスクがあります。所有者には民法上の「土地工作物責任」があり、被害が出た場合は損害賠償義務を負います。
実際の判例では、空き家の倒壊で隣家の塀を壊した事例で数百万円、屋根瓦の落下で通行人がけがをした事例で数千万円の賠償命令が出ています。火災保険は「居住中の物件」が前提のため、空き家には適用されないか保険料が高くなります。
相続して名義が自分になった瞬間から、これらの責任は所有者(自分)に移ります。実家が地方にあって普段見に行かないケースほど、リスクの存在を忘れがちです。
リスク3:数次相続で売れなくなる
所有者が高齢のまま空き家を放置していると、所有者本人が亡くなったときに次の相続が発生します。これが繰り返されると、相続人の数がどんどん増えていきます。
相続人が増えると、空き家を売却するときに全員の同意と署名・実印が必要になります。仲が悪い親族がいたり、行方不明者がいたりすると、それだけで売却が止まります。
2024年4月から相続登記が義務化されたので、放置するメリットはもうありません。むしろ放置すると過料10万円のリスクも追加されます。
放置を避ける3つの選択肢
1. 売る
いちばん早い解決策。住宅地の物件なら不動産会社の一括査定で複数社から相見積もりを取り、市場価格を把握できます。相続から3年以内に売却すれば、被相続人居住用財産の3,000万円特別控除も使えます(本サイトの別記事で詳細解説)。
2. 貸す
立地が良ければ賃貸物件として貸す手も。ただし空き家を貸すには修繕費(数十万〜数百万)が必要で、家賃収入と回収期間を慎重に計算する必要があります。借主とトラブルになるリスクも考慮してください。
最近は自治体が運営する「空き家バンク」や、定額制の月額制サブスクリプション住宅(ADDress、Sansoなど)に登録する選択肢もあります。
3. 解体する
建物を解体して更地にすると、特定空家のリスクは消えますが、住宅用地特例も外れて土地の固定資産税が上がります。解体費用も木造30坪で100-150万円が相場。「売る・貸す」が成立しないときの最終手段です。
自治体によっては解体補助金の制度があります(数十万円程度)。市区町村のウェブサイトで「空き家 解体 補助金」と検索すると、対象要件と申請方法が見られます。
※ 記事の内容は公開時点の情報に基づきます。最新の制度や数値は法務局・国税庁・各市区町村の公式サイトでご確認ください。本サイトは情報整理を目的とした民間運営サイトで、個別の法律・税務判断は行いません。具体的な手続きは司法書士・税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。